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【社労士が指南】コンプライアンスの事例や違反防止対策を解説

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企業を運営する上で注意したいコンプライアンスについて、正しく理解しているでしょうか。

コンプライアンスという言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのようなものを意味しているか理解していない人も多いのではないでしょうか。

正しく理解していないと、知らず知らずのうちにコンプライアンス違反をしてしまい、従業員であれば会社からの評価が、経営者であれば企業に対する社会からの評価が大きく損なわれることになりかねません。

このページでは、コンプライアンスの具体的な事例を交えながら、誰でもわかりやすいように解説しています。また、一歩踏み込んで、コンプライアンスを違反しないための対策まで紹介しています。

社会保険労務士の西方克巳先生に理解するうえで注意しておきたいポイントをお聞きしているので、ポイントを押さえながら読み進めると理解しやすいと思います。

 
社会保険労務士
西方 克巳

コンプライアンスについて理解する際は以下の点に注意すると良いです。

・コンプライアンスの幅広い定義
コンプライアンスの意味する範囲は非常に広く分かりにくいため、知らずに違反をしてしまっているケースが多くあります。コンプライアンスの定義をなるべく正確に把握しておきましょう。

・企業内での教育/周知
コンプライアンスは、企業で働くすべての従業員が意識する必要のある概念です。従業員にも理解してもらうにはどのようにすればよいか、想像しながら読み進めると良いでしょう。

コンプライアンスについて良くある疑問
~このページで解決します!~
コンプライアンスって何ですか?
法律や条令などはもちろんのこと、社会的通念や慣習、倫理観などを守ることです。

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コンプライアンス違反をするとどうなりますか?
違反した内容に依って異なりますので、一概には言えません。法律違反であれば罪に問われますし、社内ルール違反であれば口頭注意で済む場合もあるでしょう。

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勤め先の企業でコンプライアンス違反を発見してしまいました、どうすれば良いでしょうか?
違反しているコンプライアンスの内容を、しっかりと把握しましょう。法律上は全く問題ないということも良くありますので、一人で抱え込まないことが大切です。

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コンプライアンス違反の予防策はありますか?
社内での意識付けや、不正や過失が起こりにくい環境作りが大切です。

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目次
コンプライアンスについて徹底解説!
コンプライアンス対策

コンプライアンスとは?

コンプライアンスとは日本語に直訳すると「法令順守」の意で、法律や条例を守りましょう、という意味です。しかし、一般的にはもっと広く、法令に加えて社会的通念や慣習/倫理観を含めたルールを守る、という意味で使用されます。

とても広い概念で混乱を呼ぶ定義だと思いますので、もう少し詳しく説明していきます。

何をしたらコンプライアンス違反になるのか

下の範囲図にて示した要素への違反が、コンプライアンス違反となります。

コンプライアンスの範囲図

コンプライアンスの範囲

この何れかに背く行為をしてしまうと、コンプライアンス違反となってしまうのです。

コンプライアンス違反の対象
  1. 国の定める「法律」への違反
  2. 行政の定める「命令」への違反
  3. 地方自治体の定める「条例」「規則」への違反
  4. 会社の定めるルールへの違反
  5. 社会的通念、倫理観への違反


「社会的通念への違反なんて、人それぞれで尺度が異なるじゃないか!」と思う方も多いのではないでしょうか。それはその通りなのです。何がコンプライアンス違反になるかは、企業によって異なりますし、ある程度は個々人の感覚に依存するものなのです。コンプライアンス違反について度々議論が生じるのは、定義の曖昧さ故なのかもしれません。

それぞれ、簡単に説明していきます。

国の定める「法律」への違反

国会議事堂
法律とは、日本国憲法に基づき、国会の議決によってのみ制定されるルールのこと。法律は政府がインターネット上で無料公開しています。(e-Gov法令検索)

法律違反は、もっとも分かりやすいコンプライアンス違反ですよね。業務内容によって違反してしまう可能性が高い法律は異なりますから、自社にとって注意すべき法律を確認しておきましょう。

法律の正しい知識を独学で習得することは至難の業なので、顧問弁護士などの専門家に相談し、業務に関連して違反してしまう可能性のある法律を洗い出してもらっておくと良いでしょう。

行政の定める「命令」への違反

命令とは行政が定める法規のことで、命令を制定する主体によって種類が異なります。内閣による「政令」、各省の大臣による「省令」、内閣府による「内閣府令」があります。命令は、法律の執行を補佐するため若しくは法律の委任の基に制定されて、法律の代わりになることはできません。

難しい定義ですが、要は行政からお達しのあったルールには従いましょう、ということです。これも分かりやすいのではないでしょうか。

地方自治体の定める「条例」「規則」への違反

条例は都道府県などの地方自治体の議決によって法律の範囲内で定められます。「規則」は地方公共団体が、条例や法律の施行目的もしくは委任によって制定されるという違いがあります。

こちらも、分かりやすいかと思います。基本的に法律を遵守していれば条約違反になることはないかと思いますが、念のため確認してください。

会社の定めるルールへの違反

会社の就業規則や業務のルール等、従業員が守るべきとされる内容への違反もコンプライアンス違反となります。例えば、会社が定めている顧客に対する受け答えのルールに違反するような対応をしているのであれば、コンプライアンス違反となります。

このタイプのコンプライアンス違反は、法律で罰せられることのないケースも多いですが、社内での評価を落とす原因になることもあるでしょう。

また、何が「コンプライアンス違反」となるかは会社毎に異なります。ある会社では良しとされていたマナーや業務内容も、別の会社では悪いこと、すなわちコンプライアンス違反とされることもあるのです。

それぞれの会社がそれぞれのルールを設けていて、会社によってコンプライアンスのレベルが微妙に異なるので、転職等で就職先が変わったらその会社のカルチャーやルールを把握するようにしましょう。会社から配布されるコンプライアンス資料などを理解し、行動に反映させる必要があります。

社会的通念、倫理観への違反

社会的な常識、通念、倫理観を大きく逸脱する行為も、コンプライアンス違反とされています。

例えば自社で作成している商品が欠陥品と分かりつつ販売しているならば、法律違反として「コンプライアンス違反」となりますし、商品を購入した人からのクレームに聞く耳を持たなければ社会通念や倫理観に反しているので、これもまた「コンプライアンス違反」となります。

社会的通念は人によって捉え方が異なるところですので、会社が従業員の行動規範や指針を示すことが重要になってきます。

コンプライアンスは非常に広い概念で中々とらえどころが難しいと思いますので、もっと理解を深めるために、実際にあった有名なコンプライアンス違反事例を確認しておきましょう。

コンプライアンス違反の事例

記憶に新しいコンプライアンス違反の事例を紹介します。

粉飾決算や脱税などの不正会計

東芝本社
2015年に明るみになった、東芝による粉飾決済は有名でしょう。最終的に2000億円以上の利益の水増しがあり、経営陣の大幅な入れ替えが行われました。

この問題では、利益追求の方法や社内の体制に不正の引き金があったとされており、社内ルール整備の重要性を再確認できます。また、その場しのぎの不正は最終的に大きな損失につながることも覚えておきましょう。

偽造/改ざん

2017年6月26日に自動車部品メーカー「タカタ」の民事再生法適用が受理されました。負債総額1兆5,024億円という製造業として戦後最大の倒産となりました。

日本が誇る超優良企業として名高かったタカタの倒産は、タカタの製品である自動車のエアバッグの不具合隠蔽から端を発しました。

2000年頃から出荷されていたエアバッグで度々事故が起きていましたが、タカタは不具合を認識しながらそれを隠蔽し販売を続けていました。結果として死者も出る自体となって最終的に隠ぺいを認め、1兆円を超える規模のリコール(無償回収/修理)を実施することになり、破産となりました。

エアバッグの不具合に気が付いた時点で公開しリコール対応など然るべき処置をとっていれば、倒産は免れていたのではないかというのが大方の見方です。

自社製品の不具合などが確実に経営層に報告されるような相談しやすい社内の雰囲気を保つことが大切です。

不正受給

2017年に起きた森友学園問題では不正受給を理由として前理事長が逮捕されています。

小学校開設のための資金を不当に高く見積もり、国の補助金をだまし取りました。補助金や助成金を得るために、受給要件に不当に自社を当てはめる行為は法律に反した重大なコンプライアンス違反です。

労働環境

電通本社ビル
大手広告代理店である電通で起きた従業員の過労死問題は、日本中に波紋を広げ労働環境に対する関心を高めた事件となりました。

労働基準法を逸脱するような働き方をしていた従業員の過労死が認められ、東京簡易裁判所から電通に対して有罪判決が出ています。

この問題は、法律にも社会的通念、倫理観にも反している重大なコンプライアンス違反でした。特に、長時間労働を礼賛する倫理観に対して明確にNOを突き付けた結果となったのではないでしょうか。

不当な長時間労働は、明確なコンプライアンス違反であり、会社の将来を左右するような厳しい罰則や批判を受ける結果が待っていることを強く認識しておくべきでしょう。

情報流出

2014年に「進研ゼミ」などを運営するベネッセコーポレーションから約2895万件の個人情報が流出したことが明らかになりました。

原因は業務委託先の元社員が顧客情報を売る目的で情報を外部に持ち出したことでした。業務委託先の元社員は後に逮捕されましたが、ベネッセコーポレーションはこの情報流出のお詫びのために200億円規模の資金を用意して情報流出した顧客への補填活動を実施しました。

コンプライアンスを守る上では、自社の従業員のみならず業務に携わる全ての関係者がコンプライアンス違反しないように仕組みから工夫する必要があります。

ベネッセ 事故の概要

誇大広告や景品表示法違反

2017年に脱毛サロン「エターナル・ラビリンス」を運営していた会社グロワール・ブリエ東京が破産しました。

グロワール・ブリエ東京は、会員数の急激な増加に設備投資が間に合わず予約や施術ができない状態であったにも関わらず予約が可能なように見せたり、月額料金を不当に低く見せるなど消費者を欺くような広告を展開したことで行政処分となりました。このことで顧客の信用を失い、最終的に破産となりました。

一時は芸能人を起用して大々的に広告を展開し2015年の売上は約41億円と拡大しましたが、一度失った顧客の信頼を取り戻すことは容易ではないようです。

ここまで、コンプライアンス違反の有名な事例を見てきましたが、もっと身近なところで違反が起きることがあります。自分たちがやってしまいがちなコンプライアンス違反をチェックしておきましょう。

やってしまいがちな違反の例

様々なケースでコンプライアンス違反のリスクがありますが、以下に紹介する例は、気付かずに違反してしまう代表的なものです。

残業

薄暗いオフィスの画像

残業代を目的とした残業や、上司が感知していない所謂「サービス残業」はコンプライアンス違反となります。

残業には手当を支払うことが定められているため、従業員がサービス残業をしていると企業側の法律違反としてのコンプライアンス違反となってしまうのです。

従業員が残業する場合は適切な処置を行うようにしましょう。

接待

接待によって取引額を増額してもらう、競合から顧客を奪う等の明らかな業務上のメリットが生じる場合は「互恵取引」にあたりコンプライアンス違反となります。

社会的通念に照らして問題ない範囲での接待は認められているので判断が難しいことも多いですが、過度な接客はリスクになりうることを覚えておきましょう。

企業によっては、取引先との接待を一切認めていないところもあります。お歳暮でさえ、正しい手続きを踏まなければ受け取れないという企業も増えているほどです。

情報非開示

消費者にとって良くない情報を自社利益を増やすためにあえて開示しない行為はコンプライアンス違反です。

例えば、小売り店の販売員が商品の明らかな欠陥を知りつつ説明せずに販売すれば、消費者からの反感を買ってしまい信頼は失墜してしまうでしょう。いくら売上を伸ばすためとはいえ、社会的な通念や倫理観に背くコンプライアンス違反をすれば大きなしっぺ返しを受けることになります。

情報流出

顧客情報や業務中に知った情報を家族や友人に話してしまう行為はコンプライアンス違反につながります。

また、故意でなくとも重要なデータを保存している電子機器や資料を紛失してしまったとしても、重大なコンプライアンス違反とみなされます。

当然ですが、重要なデータが会社から持ち出せるようになっていた企業の体制への批判も当然生じるでしょう。

備品や設備のプライベートでの利用

会社の電話をプライベートな目的で使用することや、社内のコピー機を業務と関係のない目的に使用したりすることはコンプライアンス違反です。また、社内で配布された携帯電話を私用に利用することもコンプライアンス違反です。

如何でしょうか。あなたや、あなたの会社では違反が起こりにくい環境になっているでしょうか。コンプライアンスに関する正しい知識や対策をせずに、コンプライアンス違反が発生してしまったらどうなるのでしょうか。

コンプライアンス違反を起こしてしまった時の影響について見てみましょう。

コンプライアンス違反をしたらどうなる?

あなたがコンプライアンス違反をしてしまった場合、どのような結果が待ち受けているのでしょうか。

コンプライアンス違反した従業員を待ち受ける結果

当然の話ではありますが、コンプライアンスを違反した場合、違反した内容によって対処方法が変わります。

社内での不正な横領であったり重大なハラスメントなどのコンプライアンス違反があれば懲戒解雇となる場合もありますし、顧客に対して不適切な発言をするなどのコンプライアンス違反であれば口頭注意で済む場合もあります。

ここでは、懲戒解雇となるコンプライアンス違反についてどのようなものがあるのかを例示しておきます。

【懲戒解雇となる可能性のある重大なコンプライアンス違反の例】
  • 社内で刑法犯に該当する違反があった場合
  • 横領や暴力など、刑法の違反が社内で生じていた場合、懲戒解雇が認められることがあります。

  • 経歴詐称
  • 従業員が会社に偽りの経歴を提示して入社していた場合、懲戒解雇が認められることがあります。

  • 連続での無断欠席
  • 14日以上連続で、連絡なしで会社を欠席した場合、懲戒解雇が認められることがあります。

  • 継続的な職務怠慢
  • 遅刻や欠席が、何度注意しても治らず、業務に甚大な被害が生じている場合、懲戒解雇が認められることがあります。

  • 社外の行動で、著しく会社の信用を傷つけたり損害を生じさせた場合
  • 詐欺、殺人、窃盗、飲酒運転での事故など、重大な犯罪を起こすなどして、会社の業績や信頼を落とした場合には懲戒解雇が認められることがあります。

  • 社内での重大な風紀侵害
  • 重大なセクシャルハラスメント、パワーハラスメントがあり、会社側の注意にも関わらず是正が認められない場合に、懲戒解雇が認められることがあります。

  • 故意または過失によって重大な被害が出た場合
  • 会社側の管理責任が満たされていることを前提として、従業員の故意もしくは過失によって生じた大規模な情報流出等の事象によって、会社業務に甚大な被害が生じた際に、懲戒解雇が認められることがあります。

※懲戒解雇が認められるには、いくつかの条件(予め上述の内容が就業規則に記載してあり従業員が認識している必要がある等)があり、ハードルは高くなっています。コンプライアンス違反を理由に懲戒解雇となるような事態はあまりないでしょうが、もし懲戒解雇を通告するorされても、処置が適法かどうかを専門家に相談するべきでしょう。

コンプライアンス違反した会社を待ち受ける結果

コンプライアンス違反をした会社は、誰かに訴えられることで違反内容に準拠した処罰を受けると共に社会的な信用を失います。企業によっては、社会的な信用の失墜が会社の存続に関わる重大な問題になることもあるでしょう。

コンプライアンス違反をしている会社は誰かに訴えられて初めて問題が表面化するということも少なくありません。経営陣が感知していない場所で生じていた不正に取引先から指摘されて初めて気が付き、莫大な補填金を支払うことになってしまったということも起こり得ます。

社内でコンプライアンス違反を発見した際は、直ちに正しい処置を行いましょう。社会的な信用失墜を防ぐことができるかもしれませんし、従業員にも認識させることで再発防止の効果もあるでしょう。

コンプライアンス違反をしてしまった従業員はもちろんですが、勤めている企業にも大きな被害が出てしまいます。実際にコンプライアンス違反が原因で倒産してしまった企業もたくさん存在します。

コンプライアンス違反が原因の倒産データ

東京商工リサーチの調査で、2017年度のコンプライアンス違反が原因で倒産した企業数は前年よりも16件増の195件となり、3年ぶりに前年度を上回りました。

直近の5年間は以下の通りで、2015年、2016年は減少傾向にありました。

コンプライアンス違反で倒産した企業数グラフ

コンプライアンス違反で倒産した企業数グラフ

2013年度:204件
2014年度:216件
2015年度:191件
2016年度:179件

倒産の原因となったコンプライアンス違反の内容で最も多かったのは、税金の滞納や脱税などの税金関連の問題でした。

また、企業の業績を偽って報告する粉飾決算での倒産も前年比250%となりました。最低賃金違反などの雇用関連問題での倒産も増加しています。

引用:東京商工リサーチ 2017年度「コンプライアンス違反」倒産

コンプライアンス違反が企業にとって如何に大きなリスクとなるかが理解できたと思います。コンプライアンス違反をしている企業は大きなリスクを抱えていますし、その企業に勤めている従業員も同様に失業リスクを抱えていると言えるでしょう。

では、勤め先企業がコンプライアンス違反をしていることが分かったとき、従業員が訴えることはできるのでしょうか。

従業員が会社をコンプラ違反で訴えることはできるのか?

業務をする中で企業によるコンプラ違反に気が付いた場合は、企業を相手にコンプラ違反を訴えることができます。

コンプライアンスの概念は幅広いのでどのような違反で訴えるかが非常に重要です。例えば、上司から暴力を振るわれた等の明らかな法律違反等があれば訴えることで賠償請求も可能となります。

一方で、法律の知識なく思い込みで”違反”として訴えても、実は法律上は問題のない行為だったということもよくある話です。弁護士や労務士などの専門家に相談して、訴えることで生じる様々な事象を把握することから始めるべきでしょう。

では、企業ではなく従業員がコンプライアンス違反をしていた際は、どこまでが企業の責任になると思いますか?

従業員のコンプラ違反はどこまでが会社の責任になるのか

基本的に、従業員のコンプライアンス違反によって生じた損害等は雇い主である企業が賠償することになります。

損害を被った人が、コンプライアンス違反をした従業員を直接訴えて損害賠償請求をしても、請求できる金額に限界があるため、その監督者としての企業を訴えるケースがあります。

また、企業の株主は損害賠償金を会社ではなく経営陣に求める訴えを起こすこともできます。経営陣の善管注意義務違反が認められる等の前提はありますが、最終的に経営陣が直接賠償を求められるケースもあります。

また、その場の金銭的なダメージだけではなく、企業イメージの失墜も免れないでしょう。いくら従業員個人のコンプライアンス違反だったとしても、企業全体のブランディングに関わるということは想像に難くないでしょう。

従業員がコンプライアンス違反をした場合は最終的に企業に責任を求められることを認識し、従業員へのコンプライアンス研修など注意喚起を進めるなど、不正や過失の起こりにくい環境を整えておきましょう。

ここまでで、コンプライアンスの概念や基本的な説明は終わりです。コンプライアンスについて理解が深まったのではないでしょうか。

やってしまいがちなコンプライアンス違反の例や、実際に違反してしまった際の悪影響を知れば、違反をしないための対策も知りたくなりますよね。

コンプライアンス違反を未然に防ぐためにはどのようなことに気を付けるべきでしょうか。

コンプライアンス違反を防ぐためにはどうすれば良いか

コンプライアンス活動

コンプライアンス活動とは、企業としてコンプライアンス違反をしてしまわないようにするための活動全般のことを意味しています。

従業員の意識徹底のための研修や、不正や過失の起きにくい環境作りなど、コンプライアンス活動は多岐にわたります。

少し具体的に、コンプライアンス活動の内容を紹介します。

注意すべきコンプライアンス違反項目の確認

経営者や従業員が専門家のような広さと深さで法律を理解することは現実的ではありません。まずは自分たちの業務で生じる可能性の高い特に注意すべき法令を弁護士等と相談して洗い出して正しく認識することが大切です。

行動規則の作成

従業員の行動規範/規則を作成すると、守るべきコンプライアンス内容が可視化されて従業員も理解しやすくなります。

また、この規則は業務内容や時と共に内容が変わるので、常に変更を反映して最新の行動規則が従業員に知らされている状況を目指すべきでしょう。

従業員への周知

研修会

会社は様々な従業員が働くことで成り立っていますから、業務で注意が必要な法令の知識を、従業員一人一人に認知させることが非常に重要です。

そのうえで、従業員の倫理観や社会的な成熟も促していくと良いでしょう。例えば飲み会の際にあまり大きな声で騒いで周りに迷惑を掛けないなど、当たり前のことですが周知させておきたいところです。

また、従業員への周知の際に注意したいのは、従業員の立場によって知っておくべき内容が変わることです。一般の従業員と管理職では意識しておくべきコンプライアンス内容が異なる場合があるので、それぞれの立場で必要な知識を伝えられるようにコミュニケーションを分けるなどの工夫が必要です。

違反の起こりにくい環境整備

不正や過失の起きにくい環境作りも大切です。

相互にチェックできるフローであったり顧客のデータを社内からのみアクセスできるように制御するなど、企業側でコントロールできるリスク管理はたくさんあります。顧客との通話や文章のやり取りを行う携帯電話では、アカウントの乗っ取りが頻発しているSNSメディアの利用を禁止することなども有効なコンプライアンス活動でしょう。

違反を素早く報告してもらう窓口の設置

従業員からコンプライアンス違反について報告を受ける相談窓口を設置しておくことも重要です。

同僚等のコンプライアンス違反に気が付いた従業員がスムーズに抵抗なく窓口に報告できるようにしておくことで、社内で生じているコンプライアンス違反を放置してしまう事態を防ぐことができます。

報告することに対してポジティブなイメージを従業員と共有したり、窓口の名称を「通報用」ではなく「相談用」とするなど、報告への心理的な負荷を下げておくことも窓口形骸化を避ける上で重要です。

違反を内部から改善する担当者の設置

社内でのコンプライアンス活動を管理し遂行する委員会や、担当役員を設置することも有効です。

コンプライアンスを順守することは企業の長期戦略に欠かせない事項であり、会社として継続的に力強く推進する機能を持つことは重要です。

外部のチェック機関を設ける

社内だけだと中々問題が解決しないことや、そもそも問題を顕在化させることが難しいことが多々あります。特に人数の少ない小規模の会社であれば、複雑な人間関係の問題からコンプラ違反を報告することに対して及び腰になってしまう従業員も多いでしょう。

外部のコンプライアンスチェック機関であれば社内の目を気にすることもなく、正しいことは正しいし間違っていることは間違っているという冷静な判断が出来ます。

例えば、労務関連でのコンプラ違反がないことを労務関連の専門家である社会保険労務士に確認してもらうなど、士業者を適切に頼ることは簡単に始められる強力なコンプラ対策になるでしょう。

 
社会保険労務士
西方 克巳
昨今では、労働者側のコンプライアンス順守意識も向上しており、労働者自信が会社のコンプライアンス違反を訴える声を上げるようになりました。

一昔前までは、企業内での不正はそのまま「内部告発」という形で公になり、企業サイドのイメージに大きなダメージを与えていましたが、現在では「内部通報制度」を取り入れる企業が増え、企業内での不正を未然に防ぐ役割を担っています。

会社内のコンプライアンス違反を、経営者が直ぐに把握できるように整備しておくことが重要です。

会社内でコンプライアンス違反が生じていることが分かった場合、従業員からのヒヤリングを交えて調査し、場合によっては行為者に懲戒を行うなどの対処が必要です。

コンプライアンスに関して社会保険労務士のアドバイス

社会保険労務士情報
社会保険労務士
西方 克巳
西方社会保険労務士事務所

昨今、企業組織におけるコンプライアンス順守の重要性が高まっています。特に、ハラスメントによる相談はこの数年で増えており、都道府県労働局のあっせん事例の増加をみても、他人事ではありません。

様々な人が働く企業においては、従業員に対するコンプライアンスの「教育」・「周知」が非常に重要だと言えます。場合によっては専門家の意見を聞くことが大切です。

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