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製造物責任法(PL法)とは?欠陥の内容や時効について事例も含めて解説

PL法

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製造物責任(PL)法について良くある疑問
~このページで解決します!~
製造物責任(PL)法ってなに?
製造者の過失・故意などに関わらず、製品の欠陥によって他人の生命、身体、財産に侵害を与えた際の責任を製造者に求めることを定めた法律です。

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損害賠償請求のやり方を教えてください
製造物責任(PL)法を利用して損害賠償請求する際にはいくつかクリアしなければいけない条件(要件)があります。

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企業はどんなことに注意したらいいの?
まずは、自社がPL法に適用されるケースを想定してみるとよいでしょう。

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実際にはどんなことに適用されるの?
これまで様々な事件でこの法律が適用され、賠償が成立しています。国民生活センターが事件の一覧を公開しているので参考になります。

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目次
製造物責任(PL)法とは?

製造物責任(PL)法って何?

製造物責任(PL)法は、製品の欠陥によって他人の生命や身体、財産を侵害してしまった場合、その欠陥が過失や故意であったかに関わらず製造業者に責任があることを定めています。

民法では、製品の欠陥があったとしてもそれが故意・過失によって引き起こされたものであることを証明できなければ損害賠償を請求出来ません。そのため、民法上で損害賠償する際には業者に過失があったことを証明する必要があり、損害賠償請求が困難になる可能性がありました。このような背景と消費者保護の観点から製造物責任法が制定されたのです。

製造物責任法では、製造業者の過失の有無が問題にならないため、損害賠償を請求しやすくなっています。文字通り製造業者が製造した「製造物」に責任が発生する法律になっているのです。

適用範囲

製造物責任(PL)法で損害賠償する際は、生命/身体/財産が、製品の欠陥によって侵害されたものであることを証明する必要があります。この証明が出来ないと損害賠償請求できません。

また、生命/身体/財産が侵害された場合にのみ適用されますので、例えば製品の欠陥によって気分が害されたというような理由では損害賠償を請求できません。

対象となる製品とは

製造又は加工された動産が対象となります。

【対象の製造物例】

・工場で製造された製品
・不動産の中にある動産、例えばドアや窓ガラス、電球、コンロなど
・加工食品(農林畜水産物であっても、加工されていれば対象。例えばトマト缶など。)

対象とならない製品とは

この法律で対象となっている製品は「製造又は加工された動産」と定義されています。

「製造または加工された」という文言によって、例えば不動産やサービス、その他の加工されていないものは含まれません。
また、「動産」という文言によって、コンピュータソフトウェアやプログラムなどの物体を持たないものも含まれません。

これらの製品に欠陥があって財産等が侵害されても製造物責任(PL)法の対象にはなりませんので、損害賠償したい場合は製品の欠陥に対する製造業者の故意・過失を証明して民法で訴えることになります。

対象となる欠陥とは

製品が通常持っているべき安全性が欠けていることを欠陥とみなしています。そのため、安全性に関わらない製品の不具合や不調、品質上の問題などはPL法の対象外となります。

例えば、購入した製品の品質がとても悪く経済的に損害を受けたというケースでは、安全性の欠落が認められずにPL法の対象外となることが想定されます。逆に、加工食品において生で食べてはいけないことを記載していなかったことで、誤って生で食べてしまい体の調子を悪くしてしまったとすると、製品の安全性の欠落が認められてPL法の対象となります。

製造物責任に関連する欠陥は、以下の3種類に分類されて理解されることが多く、裁判でも3分類にて判断されていくことが多いでしょう。

【製造物責任で一般的な欠陥の3種類】
  • 設計上の欠陥
  • 製品の設計上の不備が原因で、安全性が欠落している欠陥です。

  • 製造上の欠陥
  • 製品が、設計計画通りに製造されなかったことによって安全性が欠落している欠陥です。例えば、製造中に異物が混入してしまい安全性が欠落した場合、「製造上の欠陥」に分類されます。

  • 指示・警告状の欠陥
  • 製品の持つ安全面でのリスクを防止するために十分な指示や警告がなされていなかったために安全性が欠落している欠陥です。

損害賠償について

要件

製造物責任(PL)法を利用して損害賠償請求する場合には、いくつかの要件があります。以下の要件を満たしていれば請求ができると考えて、専門家に相談してみると良いでしょう。

【製造物責任(PL)法で損害賠償する際の要件】
  • 製品の欠陥を証明
  • 損害を被ったことの証明
  • 製品の欠陥と、被った損害との因果関係の証明

被った被害と欠陥との因果関係の証明は被害者が行う必要があります。製造業者に証明させることを強制することはできないので注意が必要です。

請求期限

製品が引き渡されてから10年間が請求できる期限となります。また、損害が発生してから3年が経過してしまうと、たとえ製品の引き渡しから10年経過していなくとも、請求権がなくなってしまいます。

製品の欠陥によって損害を被った際は、なるべく早く対処するようにしましょう。

請求額

請求金額は被った損害に照らして、法律や判例に則って判断されます。損害額の計算や請求できる賠償額は、知識がないと難しいので専門家の協力を仰ぐと良いでしょう。

損害を被った場合は、消費生活センターや各種公的機関の相談窓口でも相談出来ますので、なるべく早くに第三者に相談するとよいでしょう。より専門的なアドバイスが欲しい場合は弁護士への相談がお勧めです。

損害を被った際にすべきこと

損害を被った場合には、損害の状況を細かに記録しておきましょう。

損害を被った現場の写真を撮影しておいたり、その場にいる人に一筆書いてもらったりと、損害の状況を詳細に記録しておくと良いでしょう。また、損害が起きたその場だけではなく付随する事象、例えば製品の欠陥によって怪我をした後に訪れた病院の診断結果や診断料金の領収書なども記録・保管しておくようにしましょう。

こうすることで、製品の欠陥や損害の証明、欠陥と損害の因果関係の証明につながります。また、記録があれば自分で証明することができなくても、専門士業である弁護士などの協力で証明することが出来るかもしれません。

企業側が注意したいこと

製造者としては、上述している欠陥の3種類をそれぞれ注意して管理しておくべきでしょう。設計上、製造に安全性の欠落が生じていないか、安全を確保するための指示・警告はきちんとなされているか、慎重にチェックするべきです。

また、製造物責任(PL)法は、輸入業者にも適用されますので注意が必要です。

対象業者

この法律でいう「製造業者」にはその商品を輸入した業者も含まれます。

【PL法対象業者の範囲】
  • 製造業者
  • 加工業者
  • 輸入業者

海外で製造された製品を日本に輸入する企業は、製品の安全性をきちんと確認してから国内市場に流通させるようにしましょう。先ほど解説した通り「欠陥」には種類がありますので、製品を確認するだけではなく実際に製品が製造/加工されている現場を視察してしっかりとした安全管理がなされているかを確認することも必要です。

実際の適用例

実際に製造物責任法(PL法)による訴訟には様々なものがあります。PL法の要件が「安全性の欠陥」ということもあり、痛ましい事例が数多くあります。ここまでの解説で基本的な知識は既にあると思いますので、是非実際の訴訟例を確認してみて下さい。

【製造物責任法による訴訟例】
事件名 原告 被告 訴訟額 事件概要
紙パック容器負傷事件

レストラン経営者

ストレートティー製造会社、パック製造会社

91万円

原告が業務用ストレートティーを開ける際に、その抽出口で左手親指にカミソリで切ったような長さ15ミリ、深さ1-2ミリの傷を負った。

缶入り野菜ジュース下痢症状事件

缶入り野菜ジュースを飲んだ家族3人

缶入り野菜飲料製造会社

660万円

夕食後、家族3人が缶入り野菜ジュースを飲んだところ、カビらしい異物があったため気分が悪くなり、下痢症状が数日続いた。

トラック火災積荷焼失事件

塗装工事会社

自動車製造会社

660万円

高速道路を走行中、トラックが炎上し積荷が焼失した。

トラック火災積荷焼失事件

塗装工事会社

自動車製造会社

660万円

高速道路を走行中、トラックが炎上し積荷が焼失した。

輸入瓶詰オリーブ食中毒事件

レストラン客など

輸入会社、レストラン経営者

4,510万円

イタリアンレストランにてその客、従業員、経営者が、被告がイタリアから輸入した瓶詰オリーブを食したところB型ボツリヌス菌による食中毒に罹患した。

引用:国民生活センター「製造物責任法(PL法)による訴訟一覧」
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